#026 じゃんけん選抜について

AKB48の19作目のシングル「チャンスの順番」。このシングルでは、選抜メンバーをじゃんけんで決める「選抜じゃんけん大会」という冒険的な試みがなされた。これは一見するとただのおバカ企画だと思われがちだが、オレはそう考えていない。AKB48内のメンバー間の「人気格差」問題への対応策だと思われる。


AKB48内のメンバー間の「人気格差」問題って??


AKB48の選抜メンバーはこれまで、ファンの人気投票で決める総選挙など、人気順で決められてきた。アイドルは人気商売であるので、人気順という選考方法は妥当である。しかし、問題がないわけではない。過去何度も選抜されているメンバーと、選抜されたことのないメンバー及び新メンバーではアドバンテージに相当の差がついてしまっている。そもそもの知名度やメディアでのアピール機会を考えると、前者が圧倒的に有利な状況なのである。


つまり、選抜メンバーを人気順で決めていくと、人気メンバーと人気のないメンバーの逆転が難しくなってしまい、メンバー間の人気格差は広がり続けてしまう。これが「人気格差」問題である。この「人気格差」が硬直化すると、グループ内の活気と鮮度が失われてしまう。それはアイドルにとっては致命的である。


「人気格差」を防ぐための一つの処方に、「新メンバーをセンセーショナルに推す」というのがある。その最たる例は松井珠理奈の売り出し方だ。当時SKE48のオーディションに合格したばかりの松井を、なんと大声ダイヤモンドでいきなりセンターポジションに置いた。新人を大抜擢することによってグループ内は活性化を目論んだのだ。これは見事に当たり、AKB48ブレイクの一因となった。実はこれはかつてのモーニング娘。における後藤真希の売り出し方と全く同じで、恐らくモデルケースとして参考にしたのだと思われる。


後藤真希の場合も松井珠理奈の場合も大成功を収めたが、「新メンバーをセンセーショナルに推す」というのはなかなか難しい。後藤や松井のような逸材は稀なのである。また、グループが安定軌道に乗っている際に、どこの馬の骨とも分からないメンバーを推すと、ファンの不満を買ってしまうというリスクがある。


「選抜じゃんけん大会」も「人気格差」を憂えた秋元康氏の考えた苦肉の策の一つだと考える。じゃんけんという全く運の要素によって未知の人材がチャンスを得ることとなる。条件面で不平等だという不満が出ることはない。またプロデューサーの思惑を超えた意外な人材が飛び出てくるかもしれないので、そのことによってグループ内の活性化も期待できるのだ。


(因みにAKB48ではメンバーごとに所属事務所が違っている。事務所推しが絡むことによって、「人気格差」問題に手をつけることは難しくなってしまっている。)